
一般的なPoE回路では、フライバックやフォワード方式のDC-DCコンバータが主なノイズ源となります。高周波スイッチング信号は、トランスの寄生容量を介してイーサネットラインへ結合し、コモンモードノイズを発生させ、伝導および放射EMI試験での不適合を引き起こします。
ある産業用IPカメラメーカーは、評価試験において30 MHz〜200 MHz帯域で放射ノイズが規格値を超過する問題に直面しました。当初はPoEトランスのメーカー変更のみを試みましたが、十分な改善は得られませんでした。
技術解析の結果、以下の問題が判明しました。
コモンモードノイズの制御不足: 高周波ノイズがRJ45ケーブルを通じて放射され、アンテナのように機能していました。
出力リップルの増大: 後段の降圧コンバータで使用されていた従来型巻線インダクタは漏洩磁束が大きく、近接場ノイズの原因となっていました。
システム全体の安定性を確保するため、トランス単体の最適化に留まらず、「周辺部品による防御ネットワーク」の導入を提案しました。
最適化された巻線構造により、漏洩インダクタンスおよび一次・二次間の寄生容量(Cps)を大幅に低減。
効果: ノイズ結合を根本から抑制。
トランスの入力および出力に専用のコモンモードチョークを配置。
原理: 差動信号には低インピーダンス、コモンモードノイズには高インピーダンスを提供。
特長: 高透磁率コアと小型パッケージにより、10 MHz〜500 MHz帯域のノイズ抑制に最適。
後段DC-DC回路において、従来の巻線インダクタを一体成形モールドインダクタに置き換え。
利点: 完全シールド構造により漏洩磁束を抑制し、高温環境下でも安定した飽和電流特性を維持。
効果: 基板レベルでの近接場放射を低減し、周辺の高感度回路への影響を最小化。
同一条件で再評価を行った結果、以下の成果が得られました。
伝導妨害(CE): マージンが –2 dB から +10 dB に改善。
放射妨害(RE): 30 MHz〜200 MHz帯域で 7〜12 dB 低減し、Class B認証をクリア。
| 構成 | 試験状態 | 結果 |
|---|---|---|
| PoEトランスのみ | 5 dB超過 | FAIL |
| PoEトランス+コモンモードチョーク | マージン 2 dB(限界) | PASS |
| トランス+コモンモードチョーク+モールドインダクタ | マージン 10 dB(安定) | EXCELLENT |
PoE製品開発において、単一部品による対策では、現代の厳格なEMI要求に対応することは困難です。
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