By NEWMAN CHEN,プロダクト・マネージャ,
LinkCom USA,
弛みない技術の進歩によって、高性能で長寿命のLED照明器具が誕生しました。LED照明器具には、その大きさや光量には関係なく、全て例外なく直流電源装置が必要です。
そして照明器具の設計の難しさは、実はこの電源に有るのです。突き詰めて言えば、LED照明器具には高品質の部材を使用し用心深く設計された電源が必要なのです。
所で、LED用電源のカタログを見ると、うんざりするくらい多くの情報が書いてあって、製品を選ぶ際に、一体どの情報を頼りにしたら良いのか戸惑ってしまいます。
ですから、ここでは製品選びの際に助けとなる要点について説明したいと思います。その要点とは。
Power(電力)、Package(パッケージ)、Performance(性能仕様) の3つの“P”です。
Power(電力)
LED照明用電源を選ぶ際には、まず使用する電源が定電流(CC)タイプなのか、或いは定電圧(CV) なのか- - -という事と何ワットの電力が必要なのか- - -という事を決める必要が有ります。
何ワットの電力値が必要なのかを知る方法は、負荷となるLED素子の順方向電圧の総合値と、このLEDに流れ込む電流のトータル値を掛け算するだけで良いです。
以下に少し補足説明をします。
順方向電圧
上記した順方向電圧の総合値とは、使用するLED素子の数と、LED素子をどの様に接続するのかによって決まります。
図1に実際の照明器具に使用されている代表的な3種類のLED構成を示します。
: 単純直列接続方式、 直列群の並列接続方式 、 並列素子群の直列接続方式
図 1: 代表的なLED負荷の構成
LED燈矩陣的順向電流數值是取決於線路上每一顆LED壓降的總和。當電壓經過每顆LED時,壓降的範圍大約在1.8~3.3伏特之間,若燈具上所採用的是藍光LED時,壓降的數值會最接近此範圍的最大值。計算出的總伏特數等於整條串聯線上的數值。
これらの LED配列の総合した順方向電圧は、個々のLED素子の順方向電圧値から求める事ができます。 LED素子個々の順方向電圧は発光色によって異なりますが1.8~3.3Vの範囲です。 照明器具に使用される事が多い青色LEDの電圧値は上記電圧範囲の上限付近です。
LED接続が複雑に構成されていの場合は、これを単純直列方式に等価回路変換して総合順方向電圧を計算します。
順方向電流
照明器具を設計する際には、まずは明るさ、つまりルーメン値を決めなければなりません。
希望するルーメン値を得る為に、どの位の電流をLED素子に供給すべきかを知る必要が有るのですが、これについてはLED素子の仕様書の中に詳細なデータ情報が記載されています。
電源の出力方式
定電圧出力方式 (CVとも表現する) の電源は、順方向電圧がそれぞれ異なる複数のLED負荷を一緒に駆動する場合等に用いられます。
電源製品の資材手配をする立場からは、1種類の電源だけを準備すれば良いので管理が大変楽です。
上記のアプリケーションの場合には、電源の出力電圧値は、各種LED負荷の中の最大の順方向電圧よりも高く設定しなければいけません。
定電圧電源の場合は、負荷である各々のLED列には電流制限回路を設ける必要が有ります。(図2を参照)
なお、この様なアプリケーションでは、望ましい効率を期待する事は難しいです。
図 2: 定電圧ドライブの場合、各負荷には電流制限回路を使用する事を推奨します。
最適な効率を得るには、定電流出力方式 (CCとも表現する) の電源を使います。
効率の観点からは、出力電圧と出力電流の出力許容スペックは狭い方が良いです。
一般的に定電流電源には出力電圧制限機能が備わっています。
Package(パッケージ)
LED用電源のカタログには様々なパッケージの製品が記載されています。
そして、それらは大規模施設や公営施設、工場や商業施設、景観用、家庭用、そして広告用等々の幅広い用途に向けて使えるように準備されています。
照明装置の構成を考える
複数の照明ユニットで構成されているハイパワーの照明設備の場合は、電源を照明器具の外部に別置する例が多いです。電源を複数個配置する場合も有ります。
上とは対照的に、ローパワーの照明器具では電源を内蔵する場合が有ります。
電源内蔵の場合、当然ですが電源の寸法や形状が鍵になります。
例えば天井の蛍光灯器具代替のLED照明器具の場合には、細長い形状の電源が必要ですし、レールに沿って移動させるダウンライトには立方形状で小型の電源が必要です。
照明器具の設置場所を考える
省エネ推進の波に乗って、LED照明器具は屋内や屋外を問わず 色々な場所で使われる様になりました。
その為LED電源は湿度変化が大きな環境(例えば冷凍装置など)や高温環境そして雨があたる環境
(例えば屋外の照明など) 等にさらされる機会が多いです。
従いLED電源はこれらの環境に充分耐える必要が有ります。
LED電源を屋外で使う場合には、防塵防水性能の程度に対応したIP等級(Ingress Protection)の製品が必要です。
IP等級の具体的な説明を表1に示します。
IP等級は国際的な標準であり、民生用を含め多くの電子機器にも適用されています。
IEC国際標準EN 60529 (英国の呼称はBS EN 60529:1992, 欧州はIEC 60509:1989)
表1: IP等級の説明です。
屋外用途のLED用電源は、使用される状況に応じて、IP-64以上の等級が必要です。
屋外景観照明等の様な場合は、雨水が侵入する可能性が高いので、IP67等級の電源が必要です。
屋外使用で有っても、電源に雨水が直接侵入しにくい構造では IP64で良い場合も有ります。
(例えば看板など)
屋外使用の場合、極端な気温の変化に留意する必要があります。
LED電源が屋外のどんな場所に設置されるのか判りませんので、余裕を考えて動作許容温度範囲の広い電源を採用する必要が有ります。
湿度(及び凍結)に関しては、屋外のみならず屋内使用の場合でも注意が必要です。
対応策は完全に樹脂充填された電源を採用する事です。
屋内使用の場合であっても温度と湿度に留意しなければならない場合が有ります。
例えば家庭用冷蔵庫の庫内照明の場合は、庫内の相対湿度は90%にもなる事を考えなければなりません。 従い、電源を含め灯具全体を密封構造にすべきです。
しかしそうすると、密封された灯具の内部温度は60℃位に上昇してしまう事を考慮する必要が有ります。
電源の性能
上に述べた様に、適切なパッケージを使用する事は、優れた性能のLED電源を設計する上で、極めて重要な要素であります。
以下は、電源性能に関する其の他の重要な要素に関する考察です。
動作性能
出力の変動: LED電源の出力変動が大きいと、灯具の明るさの変動が目ではっきりと確認できます。 その為、出力変動は±5%以下に抑える必要が有ります。
力率: LED電源はスイッチング回路を使っている為、回路設計が不適切だとAC入力波形に大きな高調波歪が重畳して力率が悪化します。
その為EN61000-3-2では基準として力率>0.9と云う性能を要求しています。
出力リップル/フリッカ : 電源の出力にリップルが重畳していた場合、その比率が30%以下であれば人間の目にはチラツキを感じません。 しかしカメラの画像にはチラツキがはっきりと記録されます。 その為リップル率は微小(3%以下)である事が要求されます。
表2 . シングル・ステージ構成とツー・ステージ構成の比較
保護回路機能
市場で定評のあるLED電源には、過電圧保護、過電流保護、科温度保護 そして出力ショート保護 の各種保護機能が備わっています。
更には、雷などからのサージ対策やトランジェント・ノイズ対策も施されています。
安全認証機関
全てのLED電源は、ULやCSA等の認証機関から安全規格認証を受けています。
そしてEMI/RFIに関してはFCC又は相応する機関の認証を受けています。
日本では安全法適合を証明するPSE認証が必要です。
欧州ではTUVやULが、TypeTLやTypeHLそしてClassPなどの規格を設け、それらに適合する電源をリストにして公表し各社電源の相互置き換えを容易にしています。
機能・性能の強化
LED照明の消費電力は旧来の照明に比べて著しく減少し、省エネに寄与しています。
今後求められるものは、調光機能や人の不在時には自動消灯するなど、省エネへの更なる寄与です。
調光 : LED照明の調光を行う場合、電源の入力側を制御する方法と電源の出力側を制御する方法が有ります。
電源の入力側を制御する技術は、Triacを使う方法とDC電圧を制御する方法が代表的です
電源の出力側を制御する技術は、アナログ方式とデジタル方式(PWM)が代表的です。
この中でもTriacは従来より白熱電灯の調光に使われていましたので、白熱灯照明をLEDに交換する時にそのまま利用できる利点が有ります。
あるいは、1~10Vのアナログ・リニア可変電圧を使えば、定電圧電源の出力電流を最大値から10%程度まで減少させる事が出来ます。
調光範囲に関しては、最大からほぼ消灯に近いところまで出力電流を制御出来る場合も有りますが、一般的には電流制御は8%位までです。
定電圧電源装置の場合にはPWM方式を使います。調光範囲は定電流電源の場合と同じです。
人の不在を感知する機能 : 人が居ない時は照明を自動的に消して省エネする と云う指令がカリフォルニア州のTitle24を皮切りに各国でも次々と発令されています。
最新のLED電源の中には、この指令に対応すべく必要な機能を内蔵した製品が有ります。
例えば、人感センサー用の電源を内蔵した物や、ビルディングの省エネ管理システムと連動する物、そして省エネ管理用の無線通信機能を備えた物などです。
慎重を期して確認すべき事
LED電源の需要が激増し、どの製品にも高い信頼性が求められます。
しかし現実として粗悪品も存在しています。 従い全てのメーカーの電源が同一の基準の下に性能検査されて出荷される事が望まれます。
信頼性に定評が有り優秀なLED電源製品は、その開発段階に於いて温度対策やEMI対策そして効率などに関し、伝統的な原理に沿って用心深い設計が行なわれていると云う特徴に着目すべきです。
これまで述べた3つのP (power, package, performance) に沿って選択した電源は、何も確認せずにそのまま使用するのではなく、慎重を期して各種の確認作業を行う事が望ましいです。
この確認作業には、製品の性能・機能の確認試験(DVT)や 量産試作(PVT)や 厳しい温度や湿度環境にも耐え得るかを見る環境試験 そして輸送時の振動や落下等の外力に耐えられるかを見る機械的試験等が含まれます。
量産が始まってからも、加速寿命テスト(ALT)や 破壊解析テスト(DPA) そして平均故障間隔解析(MTBF)などの 継続的信頼性試験(ORT)を実施する事が望まれます。